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服装/腰帯の基準

グループのロゴの入った白いTシャツに白のズボン、段位を示す腰ひもというお馴染みのいでたちが定着したのは、ごく最近のことです。それはスポーツとして確立され、カポエイラを習うには月謝を払ってアカデミア(道場、学校)に通うのが当たり前のこととなり、またアカデミアどうしのライバル意識が芽生えてくる過程に重なっています。

ではその前はどうだったのか?腰ひもの色にはどういう基準があるのか?など、ここではカポエイラの服装に関する素朴な疑問を簡単にまとめておきます。

カポエイラの正装は上下白?

roupabranca一昔前のサルバドールなどでは上下白の背広に身を包んでカポエイラをする光景がよく見られた。今日でもバチザードやイベントなどに参加するとき、私の師匠なども白いシャツとズボンを必ず着ていく。これはカポエイラに限らず、黒人たちの晴れ着に白が好まれた名残である。カンドンブレの儀式などもオリシャーの色を除けば、ほとんど純白である。

カポエイラのなかでは、ホーダを出たときにこの白が汚れていないことが、実力をはかるバロメーターの一つにもなっていた。、足払いを食って尻もちをついたり、技をよけきれずに相手の足跡がお腹についているのは恥ずかしいことだった。同時に相手の晴れ着を汚さないのもマナーのうちで、相手の防御が遅れれば、攻撃を寸止めできる余裕が評価された。今日でも古い師匠たちの中には、ジョーゴのあと抱き合うときに、手の甲側で相手の肩を叩く人がいる。これも床で汚れた手のひらで相手の服を汚さないための気遣いなのだ。

roupasem白の背広と切り離せないのが、絹のネッカチーフだった。メストリ・ビンバによれば、純絹はカミソリでも切れないといい、カミソリの攻撃から首を守る役割があったという。しかし一般的な見解は、単に襟首を汗や汚れから守るというものだ。現在のような高品質の洗剤などあるわけもなく、貧しい彼らが服の白さを保つのはたいへんだったに違いない。

しかし上に述べたのはあくまでも日曜日や祝日など特別な日の場合である。普通の日は、文字通りの普段着、仕事着だった。それでなくてもカポエイラに対する迫害が強かった状況で、一目でカポエイラだと分かるような服装はむしろ避けられるべきだったろう。

アンゴレイロの黄色と黒の意味は?

roupapretoamareloメストリ・パスチーニャがユニフォームの色として採用した黄色のTシャツに黒いズボンというとり合せは、彼のアカデミアが所属していたスポーツクラブ所有のサッカーチーム、イピランガのユニフォームの色にちなんでいる。したがってカポエイラの伝統とはまったく関係ない。

今日、この色を受け継いでいるのは、メストリ・クリオー、メストリ・モライス、コブリーニャ・マンサらいずれもパスチーニャの弟子や孫弟子のグループである。しかしパスチーニャの弟子としてもっとも有名なジョアン・ピケーノ、ジョアン・グランジの二人はグループのロゴの入った上下白のユニフォームを採用している。ブラジル・カポエイラ・アンゴラ連盟の正装も背広、ポロシャツいずれも白だ。その他アンゴラの古いメストリたちも基本的に白を用いた。

パスチーニャがこのような奇抜な色をとり入れたのは、観光客の注目を引く必要があったためだとも言われている。実際ペロウリーニョの観光スポットになっていた彼のアカデミアでは、観光客が訪れるとホーダが始まったといい、観光協会もてこ入れをしていたようだ。

ナゴアスとグァイアムンス

nagoaseguaiamuns19世紀のリオの町で縄張り争いを繰り広げていたマウタ(徒党)の二大勢力にナゴアス(nagoas)とグァイアムンス(guaiamuns)がある。ナゴアスは、どちらかというとアフリカ系で、グァイアムンスはブラジル生まれのクレオール(混血)系だった。日本のやくざにも、ナントカ組系列というのがあるように、この二つの系列のなかでさらに小さいマウタに分かれていた。

興味深いのは、それぞれに服装の特徴が決まっていたという点である。それぞれにシンボル・カラーがあって、ナゴアスが白、グァイアムンスが赤だったという。ナゴアスは、赤の上に白いズボンで、帽子は目が隠れるくらい深々とかぶっていた。グァイアムンスは白の上に赤いズボンで、帽子のつばは前部を上に折り曲げている。お互いに相手の色の上に、自分たちの色をかぶせることで、優越性を示そうとしたらしい。

このようにリオとバイーアという地域によって、また時代によってカポエイラたちの服装の特徴も実にさまざまだった。

縦じまのズボン

roupatatejimaブラジルに行ったことのある人で、フォルクローレ・ショーなどを見た人は、そのなかに登場するカポエイラが縦のストライプの入った膝下までの短いズボンをはいているのを見たかもしれない。これは、このホームページの表紙にも使ったルジェンダス(Rugendas)の版画などに基づくもので、かつての奴隷たちの服装をイメージしているのだ。面白いことに、ルジェンダスが縦じまばかり描いているのに対し、同時期に活躍したフランス人の紀行家デブレ(Debret)は横じまのズボンばかり描いている。

リオのグルーポ・センザーラをはじめ、私の師匠ブラジリア、スアスナらのショーでも奴隷のカポエイラをイメージした衣装として、縦じまの短いズボンがよく使われた。しかしこれも特殊なイメージが有名になりすぎたためで、本当に奴隷たちが縦じまのズボンばかりはいていたわけではないだろう。

コルダゥン・腰ひも

カポエイリスタが段位を表すのに用いている腰ひもは、その編まれ方によってコルダ(corda)、コルダゥン(cordão)、コルデウ(cordel)といくつかの呼び方があるが、もっとも一般的なのはコルダゥンだ。

段位、進級というシステムをカポエイラにとり入れたのはビンバだったが、彼は腰ひもではなくネッカチーフ(lenço)を採用していた。コルダゥンを使い始めたのはサンパウロあるいはリオ・デ・ジャネイロからだったといわれている。

いわゆる「アンゴラ」のグループは、現在は進級という制度自体を認めていないので、腰ひもも採用していない。

進級の基準

cordao空手や柔道の帯のように、カポエイラの場合もその色によって段位を区別する。ただ最大の問題、というよりはもっとも違うところは、その基準がグループによってマチマチだということ。配色の順番も違えば、生徒に段位を与える判断はまったくそのメストリの裁量に委ねられている。

下に例を掲げるが、同じ色でもグループによって位置付けが異なるため、単純にコルダゥンの色からその人の段位を判断することはできない。それを知るには、まずその人がどのグループに属しているかを知る必要があるのだ。例えば、同じ緑帯を締めていても、ブラジル連盟なら第一段階に過ぎないが、アバダでは第9段階のベテランにあたるのだ。

普通、腰ひもをもらうのと引き換えに一定の金額をメストリに納める。するとどこの世界にもあることだが、金を稼ぐためにコルダゥンを「売る」メストリがでてくる。結果として、十分な実力もない生徒が不相応なコルダゥンを受け取り、グループ全体のレベルが低下する。

したがってカポエイラの世界で相手の実力を知るためには、とにかくジョーゴを実際にしてみなきゃ分からない。何年練習しているか、コルダゥンはなに色かをたずねても、ほとんど参考にはならないのだ。「コルダゥンはズボンが落ちないようにするためのもの」と皮肉られるのも、このような事情による。

結局、これを言ってしまうと身もふたもないが、「私はメストリだ」といわれてみても、それは「自称」である確率も非常に高い。ブラジル・カポエイラ連盟にはメストリの資格を認定する客観的基準は設けられているものの、加入団体数の貧弱さや歴史の浅さのため、未だ十分機能しているとは言いがたい。

参考までにいくつかの団体の進級制度を見てみよう。

 ブラジル・カポエイラ連盟(Confederação Brasileira de Capoeira
1 初心者(aluno iniciante): コルダゥンなし
2 洗礼を受けた者(aluno batizado): 緑
3 練習者(aluno graduado): 黄
4 練習者(aluno graduado): 青
5 中級者(aluno intermediário): 緑/黄色
6 上級者(aluno adiantado): 緑/青
7 研修生(aluno estagiário): 黄/青
8 卒業生(aluno formado): 緑/黄/青
9 講師(monitor): 緑/白
10 先生(professor): 黄/白
11 準師範(contra-mestre): 青/白
12 師範(mestre);白
12 師範(mestre): 白
◆1から8までが生徒(aluno)のカテゴリー、9から12までが教官のカテゴリーになる。
◆連盟の基準では、生徒のカテゴリーについては各アカデミアのメストリの裁量、教官以上は連盟の主催する講習会などを受講する必要が出てくる。
連盟の配色は、ブラジルの国旗に使われている色が外側から内側に向かって用いられている。これは、1972年に設立されたブラジルで最初の州レベルの連盟、サンパウロ・カポエイラ連盟の場合も同じだった。
◆ちなみにブラジル連盟が設立されたのは94年のこと。
それぞれの段階で最低限必要な練習期間が定められている。
◆年少者には灰色を編み込んだ、別の基準がある。
◆またメストリ以上にも、金、銀を編み込んだ、名誉段位に当たるような位も3段階あるが、実際にはまだ運用されていないようだ。
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